きょうは、アーカーのベネフィット3分類について綴ってまいります。
商品サービスをおすすめするときは、ベネフィットを伝えることが大切です。
なぜなら、読者は商品そのものではなく、ベネフィットを一番に知りたいと思っているからです。
なんとなくベネフィットを並べるのではなく、ベネフィットの3分類を理解して伝えると、商品サービスの魅力を最大限に伝えられます。
そこで今回の日記では、ベネフィット3分類を用いた、心を動かすメッセージの伝え方を解説します。
3種類のベネフィットを理解できると、商品がもたらす価値をわかりやすく伝えることができ、読者の「欲しい!」気持ちを刺激できます。
読者に役立つ価値を提供するためにも、ぜひ参考にして実践してみてくださいね
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ベネフィット3分類とは?心を動かす伝え方
心を動かす言葉を伝えるときに役立つのが、アメリカの経営学者デービッド・アーカー氏が考えだしたベネフィット3分類です。
ベネフィット3分類は、ブランド戦略について説いた考えですが、一般の商品サービスにも有効に使えます。
ベネフィットはつぎの3つに分類できます。
アーカー氏は、ベネフィット3分類について、つぎのように述べています。
機能的ベネフィットではなく、情緒的ベネフィットと自己実現ベネフィットに目を向けよ
アーカー氏は、読者の心に強く訴えるならば、機能的な側面ばかりに注目するのではなく、読者が感じる心地よい満足感や理想の姿を伝えることが大切だといいます。
その理由は、情緒的ベネフィットと自己実現ベネフィットを伝えることで、読者は、商品サービスを手にしたあとの幸せな感情や生活の変化をイメージできるからです。
アーカー氏は、その伝え方を具体的にしめしています。
・Zaraで服を買えばクールな気分になれる ・Lexusを運転すれば成功者の仲間入りができる ・Quaker Oatsのホットシリアルを作る私はやさしい母親だ
商品サービスの特徴や利点のみを伝えるのではなく、その後の変化や体験をストーリーにして伝えることで、読者に未来の姿を具体的にイメージさせられます。
このように、ベネフィットを3つに分類することで、読者によりわかりやすく商品の魅力を伝えられます。
アーカーのベネフィット3分類
では、3つのベネフィットを一つひとつ見てみましょう。
機能的ベネフィット
- 商品サービスの持つプラスの特徴・性能
- 使いやすい・頑丈・軽い、など
機能的ベネフィットとは、商品サービスが持つ機能的な特徴によって得られる利益のことです。
メリットと同じような意味で使われます。
つぎのような利益があります。
使いやすい、上質、頑丈、便利、軽い、おいしい、など
わかりやすく具体例を見てみましょう。
たとえば、体型を細く見せるワンピースがお店に飾られていたとします。
このワンピースの「細く見せる」「肌触りが良い」という特徴は、プラスに感じますよね。
このプラスに作用する特徴が機能的ベネフィットです。
商品やサービスがどのように役立つのか、具体的に何ができるのかなど、その優れた品質から得られる効果を指します。
情緒的ベネフィット
- 商品サービスから生まれるプラスの感情
- 安心感・かっこよさ・充実感、など
情緒的ベネフィットとは、商品サービスを利用することで、心地よい感情をもたらす利益のことです。
「この商品サービスを使うとき私は〇〇を感じる」と思える感情です。
つぎのような感情があります。
高級感、新鮮さ、安心感、おもしろさ、充実感・かっこよさ、など
先ほどのワンピースを例に見てみましょう。
体型を細く見せる特徴のワンピースを着ると、女性らしい自分を演出できたり気分を変えたり、気持ちが高揚して充実感を味わえますよね。
このプラスに作用する感情が情緒的ベネフィットです。
商品やサービスを使うことにより、心を豊かにする経験を味わえたり、感動を体感したりできる精神的な喜びを指します。
商品やサービスの品質や性能には関係ありませんが、使う人の好き・嫌いの気持ちにつながる重要な要素になります。
このように、商品サービスが顧客にもたらすベネフィットは、機能的なベネフィットと情緒的なベネフィットから成りたっており、これらを掛け合わせたものが商品サービスの価値になります。
そしてさらに、ブランドの神様といわれるアーカー氏は、このふたつにプラスして「自己実現ベネフィット」を提唱します。
自己実現ベネフィット
- 商品サービスから感じる理想の姿
- 自分らしくいられる・自分に自信を持てる・理想の姿になれる、など
自己実現ベネフィットとは、商品サービスを利用することで、理想の姿を実現できる利益のことです。
「この商品サービスを使うとき私は〇〇である」と思える理想の姿です。
つぎのような姿を想像します。
自分らしくいられる、こだわりを出せる、なりたい自分になれる、など
ワンピースの例を見てみましょう。
体型を細く見せるワンピースを着ると「ただ服を着る」という行為だけでなく「自分を素敵に見せる」という付加価値が加わります。
それにより、ワンランク上の世界に触れることができ、一段上の自分を演出できます。
ファッションが好きな人にとっては、さらにおしゃれが好きになり、自分を表現する手段のひとつになって自信も生まれますよね。
この理想の姿が、自己実現ベネフィットです。
商品やサービスを手にすることで可能になる、自己表現や自己実現に関する利益をいい、自分に価値を感じられる、ありたい自分でいられるといった視点を指します。
では実際に、ブランドメーカーのベネフィット3分類を見てみましょう。
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ナイキのベネフィット3分類
今度は、アメリカのブランドシューズ、ナイキを例にベネフィットを紹介しますね。
ナイキは会社設立当初、日本のシューズメーカー・アシックスのアメリカ代理店販売所に過ぎませんでした。
ですがその後、トップアスリートと専属契約を結び、性能や品質の保証を宣伝することで、その名を世界に広めることに成功しました。
ナイキ・シューズのベネフィット3分類はつぎのとおりです。
ナイキはこれらのベネフィットをうまく組み合わせることで、その価値を世界に届けました。
まずは「機能的ベネフィット+情緒的ベネフィット」のメッセージを見てみましょう。
◆ 機能的ベネフィット+情緒的ベネフィット ・衝撃に強いエアがついているナイキシューズはとてもクールだ ・グリップに優れた機能は先進的だ
つぎは「情緒的ベネフィット+自己実現ベネフィット」のメッセージを見てみましょう。
◆ 情緒的ベネフィット+自己実現ベネフィット ・クールで先進的なシューズを履いている自分は、意識が高いアスリートだ ・クールでかっこいいヒーローになれる
これらのメッセージからもわかるように、ナイキは、それぞれのベネフィットを上手に組み合わせ、心の奥底にある根本的な欲求を刺激して世界を魅了しました。
紹介した組み合わせは一例ですが、何通りにも変えることができ、より強いメッセージで訴えることができます。
それぞれを組み合わせることで、さらに強いメッセージになり、読者の心を大きく動かせます。
とくに、情緒的ベネフィットと自己実現ベネフィットに注目して魅力を伝えると効果的です。
こちらの「Webサイトでの正しいブランディングと3つのベネフィット」は有名企業のWebサイトを実例にして説明した記事です。
実例を見ることで理解が深まりますので、ぜひご覧くださいね。
自己実現ベネフィットを伝える重要性
最近は、似たような商品サービスが強みを打ち出しており、機能的なベネフィットをアピールしても、ほかと差別化するのがむずかしく、成果につながらない市場になっています。
そのため、機能的なベネフィットだけでなく、情緒的なベネフィットや自己実現ベネフィットを強く伝えて、より深い価値を提供することが重要です。
顧客の志向に合ったメッセージを伝えて、疑似的な体験や感情を味わってもらうことで、競争が激化しているなかでも、その心を掴み、成果につなげることができます。
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顧客に響くベネフィットを見つける方法5選
商品サービスによっては、ベネフィットを考えるのが困難なこともあるでしょう。
そのようなときは、つぎの方法をお試しください。
商品サービスの特徴を書きだす
機能・品質・強み・価格・デザイン・技術・利便性・開発の経緯・想いなどをすべて書きだそう!
まずは、商品サービスについて徹底的に知ることが大切です。
製品の機能、品質、強み、価格、デザイン、技術、利便性、開発にいたった経緯、想いなどをすべて書きだします。
これらの特徴を洗い出すことで、どのようなベネフィットを提供できるのかが明らかになります。
顧客のコメントや感想を分析したり、資料を読み込んだり、市場を調べたりすると、思わぬベネフィットを見つけ出せることがあります。
ほかと比べてどのように優れているのか?顧客にどのような印象をあたえているのか?をしっかりと理解して検討しましょう。
だれの役に立つのかを明確にする
特定の顧客に焦点をしぼろう!
同じ商品であっても、人によってベネフィットは異なるため、だれの役に立つのかを明確にすることが欠かせません。
たとえば、同じスーツケースであっても「20代の男性」と「40代の男性」では、求めているベネフィットがまったく違います。
その商品がだれにとって有益であるかを明確にし、どのようなニーズがあるのかを考えます。
それにより、特定の顧客に焦点をあてた、彼らの要望を満たすベネフィットを見つけられます。
宣伝の仕方や販売方法にも関わるので、あらかじめだれの為の商品なのかをはっきりと決めておきましょう。
顧客が叶えられることを連想する
顧客のどのような目標や希望を実現できるかを考えよう!
いきなりベネフィットを考えるのがむずかしいときは、商品サービスの特徴から顧客が叶えられることを連想することも有効です。
たとえば、先ほどのスーツケースの特徴を考えてみましょう。
上の特徴から、顧客が叶えられることを連想します。
上のように、商品サービスを利用することで、顧客がどのような目標や希望を実現できるかを考えると、有益なベネフィットを見つけられます。
他者の商品を分析する
どのようなベネフィットを強みにしているのか調査しよう!
他社が提供している商品サービスを調査し、彼らがどのようなベネフィットを強調しているのかを分析することも、ベネフィットを見つける助けになります。
具体的には、商品の広告やWebサイト、販売戦略やお客さまレビューなどを調査し、どのようなベネフィットを強みにしているのかを掘り下げます。
それにより、だれに向けた商品なのか、他者の顧客層や市場のポジションを把握できます。
それをもとに考えることで、あなたの商品サービスがどのように優れているのか?何に活かせるのか?ほかでは得られない独自の価値を見出せます。
お客さまの声を分析する
実体験にもとづいた意見を参考にしよう!
可能であれば、直接インタビューを行ったりアンケートを行ったりして、顧客の悩みや要望、望むベネフィットを質問することもできます。
さらに、既存の顧客からの感想やコメントを集めると、どのような場面でどういった価値を提供しているのかを理解でき、実体験にもとづいたベネフィットを把握できます。
顧客にとっての重要なポイントを知ることができるため、調整の余地がある場合は、顧客のニーズに合わせて商品や販売戦略を改善できます。
ベネフィットを伝えるときの注意点
ベネフィットを伝えるときは、つぎの3つの点を押えてアピールしましょう。
必ず自己実現ベネフィットを強調する
メリットだけを並べないこと
商品サービスのよさをアピールするために、メリットだけを並べることはよくあることです。
たとえば、日焼け止め商品を紹介するときに「紫外線を強力カット」「潤い成分配合」と訴えることは、メリットのみを伝えている状態です。
メリットだけでも魅力を感じて購入する人もいますが、購買意欲を掻き立てる文章には遠くなります。
そのため、必ず自己実現ベネフィットを伝えて、顧客にどのような変化や体験をもたらし、満足できるのかを強調する必要があります。
つまり、日々の活動や生活に、どのようなポジティブな影響をあたえるのかを明確に伝えることが大切です。
顧客の潜在ニーズを理解する
顧客の本当に求めているニーズを理解すること
潜在ニーズとは、顧客自身も自覚していない欲求や願望のことです。
反対に、顧客自身が気づいている欲求や願望は、顕在ニーズといいます。
顧客の潜在ニーズを理解すると、本当に求めているものを知ることができ、本音にもとづいたベネフィットを打ち出せます。
しかし、潜在ニーズを探るには、顧客へのインタビューやアンケート、購入者の行動を観察するなど、独自の調査が必要になります。
ありきたりなベネフィットを並べない
特別な利益や他では得られない付加価値を伝えること
一般的でありきたりなベネフィットでは、顧客の注意を引くことができません。
加えて、顧客が簡単にイメージできるようなベネフィットでは、独自の魅力も伝わりません。
たとえば、ダイエットサプリの商品で「スタイルに自信が持てるようになる」とアピールしても、当たり前のことなので、いまひとつな印象にしか残らないでしょう。
ある市場でのみ提供される特別な利益や、他社の商品では提供できない付加価値を伝えることが、顧客やリピーターの獲得につながります。
このように、ベネフィットを伝えるときは、3つの注意点を念頭に置いて、商品サービスのユニークな価値を際立たせることが大切です。
深層心理にアプローチし、自己実現ベネフィットを強調して、効果的に成果につなげましょう。
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おさらい:アーカーのベネフィット3分類
アメリカの経営学者デービッド・アーカー氏は、ベネフィットを3つに分類して考えを説きました。
ベネフィットを3つに分類すると、読者に具体的にイメージさせることができ、商品サービスの魅力をわかりやすく伝えられます。
そのためには、つぎの2つが重要です。
ポイントを押さえることで、より強いメッセージで読者の心を動かせます。
これから商品サービスを紹介するときは、情緒的ベネフィットと自己実現ベネフィットを意識しておすすめしましょう。
実際にベネフィットを考えるときは、ベネフィットの仕組みを分解した「FABフォーミュラ」を使うと便利です。
下の記事で解説していますので、こちらもあわせてご覧くださいね。
おしまいに
ナイキが、アシックスの代理店販売所であったとは驚きですよね。
創業者のフィル・ナイト氏は大学院在学中からこのビジネスプランを考え、卒業後に神戸に出向いたそうです。
マイケルジョーダンとの独占契約もそうですが、考える発想が並はずれていて素敵ですね。
ナイキのCMや広告を見かけたら、ぜひキャッチコピーにも注目してみてくださいね。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございます。
それでは、ごきげんよう。
桜御前