きょうは「ら抜き言葉」について綴ってまいります。
あなたは「ら抜き言葉になっている」と文章の指摘を受けた経験はありませんか?
「ら抜き言葉」は可能の意味の「見られる」の言葉を「見れる」のように使う表現をいいます。
「ら抜き言葉」は、話し言葉でよく使われますが、文章やビジネスの会話では使わないほうがよいとされています。
今回の日記では「ら抜き言葉」の適切な見分け方と言い換え方をわかりやすく解説します。
「ら抜き言葉」を理解すると、誤解をあたえずに正しい意味を伝えられます。
正しい日本語の使い方が身につきますので、ぜひご参考くださいね
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「ら抜き言葉」とは?「ら」を抜いた言葉
「ら抜き言葉」とは、可能を意味する動詞「られる」から「ら」を抜いた言葉です。
「見られる」「来られる」から「ら」を抜くと「見れる」「来れる」という言葉になります。
この表現を「ら抜き言葉」といいます。
「ら抜き言葉」でよく使われる動詞には、つぎの言葉があります。
「ら抜き言葉」は、話し言葉として昭和初期から使われはじめ、戦後ますます広まりました。
それまでは、方言として全国各地で使われていたので歴史はとても長いです。
「ら抜き言葉」は、文法上に誤った言葉なので新聞や公的文書に使われることはありません。
会話で使う場合にはあまり気になりませんが、文章を作成するときやビジネスの場で使うときは、軽い印象や稚拙な印象をあたえます。
丁寧さを求められる場面では「ら抜き言葉」の使用を控えましょう。
「ら抜き言葉」の例文
「ら抜き言葉」には、どのような言葉があるのでしょう?
よくある「ら抜き言葉」を見てみましょう。
◆ 「ら抜き言葉」→「正しい言」 ・無事に降りれる→降りられる ・自転車を借りれる→借りられる ・この大きさなら着れる→着られる ・毎朝きちんと起きれる→起きられる ・電話に出れる→出られる ・いくらでも寝れる→寝られる ・ボールを投げれる→投げられる ・迷わずに決めれる→決められる ・自分ひとりでよけれる→よけられる ・京都まで来れるらしい→来られる
上のような例文は、普段の会話でよく耳にするのではないでしょうか?
「ら抜き言葉」は、動詞の中でも上一段活用、下一段活用、カ行変格活用にできる動詞に使われます。
ですが、文章を書くときに「られる」を使うのか「れる」を使うのか迷いますよね。
つぎの項目で、適切な見分け方を見てみましょう。
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「ら抜き言葉」の見分け方
可能の意味をあらわすときに「られる」を使うのか「れる」を使うのかは、接続する動詞の種類によって異なります。
ここでは簡単な見分け方を見てみましょう。
勧誘の「~よう」がつく動詞は「られる」がつく
可能の意味をあらわすときに、動詞を勧誘の「~よう」に活用して見分けましょう。
勧誘の「~よう」がつく場合は可能の「られる」がつきます。
反対に、勧誘の「~よう」がつかない場合は可能の「られる」はつきません。
わかりやすいので例文を見てみましょう。
◆ 勧誘の「~よう」がつく動詞 ・見る→見よう→見られる ・来る→来よう→来られる ・着る→着よう→着られる ・食べる→食べよう→食べられる
上のように、勧誘の「~よう」がつく場合は可能の「られる」がつきます。
「ら」をつけ忘れると「ら抜き言葉」になるので注意しましょう。
では、勧誘の「~よう」がつかない場合を見てみましょう。
◆ 勧誘の「~よう」がつかない動詞 ・書く→書こう→書ける ・読む→読こう→読める ・歩く→歩こう→歩ける ・買う→買おう→買える
上のように、勧誘の「~よう」がつかない場合は、可能の「られる」はつかないので「ら抜き言葉」になる心配は要りません。
未然形に活用して判断する
可能の意味をあらわすときに、動詞を未然形の「~ない」に活用して見分ける方法を見てみましょう。
未然形の「~ない」の直前がイ段・エ段の場合は、可能の「られる」がつきます。
未然形の「~ない」の直前がイ段・エ段ではない場合は、可能の「られる」はつきません。
つぎの流れで見分けましょう。
参考までに動詞の活用形と見分け方を載せますね。
動詞の活用形一覧
五段 ア段 | 上一段 イ段 | 下一段 エ段 | カ変 | |
基本形 | 読む | 見る | 食べる | 来る |
未然形 | ま も | み | べ | こ |
連用形 | み ん | み | べ | き |
終止形 | む | みる | べる | くる |
連体形 | む | みる | べる | くる |
仮定形 | め | みれ | べれ | くれ |
命令形 | め | みろ みよ | べろ べよ | こい |
五段・上一段・下一段を見分けるには、動詞に「~ない」をつけて直前の音の段をみます。
例文を見てみましょう。
◆ 未然形の「~ない」の直前がイ段・エ段の動詞 ・見る→見ない→「見(み)」はイ段→見られる ・食べる→食べない→「べ」はエ段→食べられる ・着る→着ない→「着(き)」はイ段→着られる ・出る→出ない→「出(で)」はエ段→出られる
上のように、未然形の「~ない」の直前がイ段・エ段の場合は可能の「られる」がつきます。
「れる」をつけると「ら抜き言葉」になるので注意が必要です。
では、未然形の「~ない」の直前がイ段・エ段ではない場合を見てみましょう。
◆ 未然形の「~ない」の前がイ段・エ段ではない動詞 ・書く→書かない→「か」はア段→書ける ・読む→読まない→「ま」はア段→読める ・歩く→歩かない→「か」はア段→歩ける ・買う→買わない→「わ」はア段→買える
上のように、「~ない」の直前がイ段・エ段ではないので「ら抜き言葉」になりません。
カ行変格活用の動詞は「られる」がつく
カ行変格活用の動詞は「られる」がつきます。
カ行変格活用の動詞は「来る」のみです。
◆ カ行変格活用の動詞
・来る→来られる
「来る」を可能の意味であらわすときは「来られる」を使いましょう。
「来れる」を使うと「ら抜き言葉」になり、日本語として正しくない表現になります。
このように、可能の意味をあらわす「られる」は、イ段の上一段活用、エ段の下一段活用、カ行変格活用の動詞に使います。
ラ行五段活用は「ら抜き言葉」?
ラ行五段活用の「走る」「帰る」を可能の意味で使う場合は「走れる」「帰れる」と活用します。
ラ行五段活用の動詞は「ら抜き言葉」ではないので、間違えて「ら」を入れないようにしましょう。
可能の意味で「走られる」「帰られる」と活用すると誤りになります。
また「ら」を入れることで受け身の意味になるため、正しく意図が伝わりません。
ラ行五段活用には、他にもつぎのような言葉があります。
◆ ラ行五段活用の動詞 ・蹴る→蹴れる ・座る→座れる ・踊る→踊れる ・乗る→乗れる ・釣る→釣れる ・掘る→惚れる ・練る→練れる ・触(さわ)る→触れる ・しゃべる→しゃべれる
見分けるポイントは、先に述べたように勧誘の「~よう」に活用することです。
勧誘の「~よう」に活用すると「走ろう」「帰ろう」と「~よう」がつかないので「られる」ではないと判断できます。
「ら抜き言葉」を言い換える方法
「られる」にすべきか「れる」にすべきか迷うときは「~することができる」と言い換えることができます。
・見る→見ることができる ・来る→来ることができる ・食べる→食べることができる ・着る→着ることができる
ただし、使いすぎると冗長な表現になり、読みにくい印象をあたえます。
言い換えるときは、必要に応じて使い分けましょう。
具体的には、つぎのような場合に限って言い換えます。
尊敬・受け身の意味と区別するとき
可能の意味をあらわす「られる」と尊敬・受け身の意味をあらわす「られる」との意味を区別する場合に言い換えます。
下のような言葉は、尊敬・受け身の意味と同じ表現になり、誤読を招く可能性があります。
正しく意味を伝えるために「~することができる」と言い換えると、誤解をあたえずに正しく意味を伝えられます。
動作を強調するとき
動作や行為を強調するときに「~することができる」と言い換えます。
他にできることがない状態や可能の意味であることを強調したいときに、あえて「~することが(は)できる」と言い換えることで意図が伝わりやすくなります。
具体例を見てみましょう。
京都なら行ける ↓ 京都なら行くことができる 京都なら行くことはできる
あえて動作を強調することで、可能の意味合いが伝わりやすくなりますよね。
このように「~することができる」に言い換える場合は、理由や意図がある場合に限って使いましょう。
使いすぎると、回りくどい印象をあたえて、かえって読みにくくなります。
冗長な表現について知りたい場合は、下の記事で解説していますのでご参考くださいね。
くわしく知りたい
【使いがちな8つの冗長表現】スッキリ改善!読みやすい文章にする方法
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なぜ「ら抜き言葉」は起きるの?
「ら抜き言葉」が使われる理由は「られる」の持つ意味を区別するためとされています。
つまり「ら抜き言葉」の「れる」を使うと、尊敬・受け身・可能の意味の区別が明確になり、可能の意味を認識しやすくなるので広まりはじめたと言われています。
たとえば「見る」を尊敬の意味にすると「見られる」になりますよね。
受け身の意味も同じく「見られる」になります。
さらに、可能の意味でも「見られる」になります。
意味の違いを認識しやすくするために「ら」を抜いて「見れる」とすることで、可能の意味であることをはっきりと区別できます。
このように、他の「られる」の意味と区別するために「ら抜き言葉」が使われるようになったと考えられています。
「ら抜き言葉」の将来性
2015年の文化庁の調べでは、本来の言葉よりも「ら抜き言葉」を使う人のほうが上回ったと発表しています。
これほど広まるということは、先ほどの理由からもわかるように、多くの人にとって使いやすい言葉であると理解できます。
「ら抜き言葉」の今後の使用については、たびたび話題にのぼるので少し触れてみましょう。
今後は動詞の活用形として認められる?
「ら抜き言葉」は、一時期、日本語の乱れの象徴として取り上げられることがありました。
今では、日本語の間違いではなく「日本語のゆれ」として「ら抜き言葉」を認識することが多いです。
「ら抜き言葉」が多数派になったという調査結果がしめす通り、将来的に動詞の活用形として認められる可能性があります。
そのため、これらの知識を頭の片隅に入れておくと、今後の変化に対応しやすくなります。
「られる」「れる」の使い方を正しく理解して、柔軟に使い分けできるようにしましょう。
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おさらい:「ら抜き言葉」の見分け方
「ら抜き言葉」とは、可能の意味をあらわす「られる」から「ら」を抜いた言葉です。
「ら抜き言葉」を見分ける方法は、動詞を勧誘の「~よう」に活用すると簡単に見分けられます。
「~よう」に活用したときに語尾に「よう」がつく場合は「ら」は必要
・見る→見よう→見られる ・着る→着よう→着られる ・食べる→食べよう→食べられる ・来る→来よう→来られる
語尾に「よう」がつかない場合は「ら」は不要
・書く→書こう→書ける ・読む→読もう→読める ・走る→走ろう→走れる ・買う→買おう→買える
「られる」にすべきか「れる」にすべきか、判断がつかないときは「~することができる」に言い換えることができます。
ただし、使いすぎると回りくどい印象をあたえるので、用途に応じて使い分けましょう。
「ら抜き言葉」は、文法的に誤った表現のため、カジュアルで失礼な印象をあたえる場合があります。
ビジネス会話やビジネス文書の場、文章を作成する場では「ら抜き言葉」を使わないようにしましょう。
参考文献
文化庁「国語に関する世論調査」
また、正しい日本語を理解するには、文法ルールを知ることも大切です。
下の記事では、読みやすい文章の基本や書き方を解説していますので、あわせてご覧くださいね。
おしまいに
2015年の文化庁「国語に関する世論調査」では「見られた」と「見れた」の言葉を使う割合をつぎのようにしめしています。
「ら抜き言葉」を使う人のほうが多いですよね。
言葉は変化するので、書き言葉として定着する日は遠くないかもしれませんね。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございます。
それでは、ごきげんよう。
桜御前