きょうは、倒置法の使い方について綴ってまいります。
- 「文章が平凡だな…」
- 「もっと思いを読者に伝えたい!」
あなたが文章を書くときに、読者の心にもっと響かせたいのなら、倒置法を使いましょう。
倒置法とは、文章の語順を通常とは逆にして伝える表現方法のことです。
意味や印象を強めるために、主語と述語の関係、修飾語と被修飾語の関係をあえて逆にして伝えます。
「かしこいな、君は」
「わたしは間に合うと思っていた、そのときまでは」
通常の語順であれば、単調になる文章であっても、倒置法を使うと上のように印象的な表現に変えられます。
強調したい部分を読み手に印象づける効果があり、文学的な表現や情緒的な表現にしたいときに最適です。
ただし、倒置法を用いるときは、注意点を知ったうえで使う必要があります。
なぜなら、論説文などの客観的な文章に使うと、読み手に違和感をあたえるからです。
そこで今回の日記では、倒置法の使い方と5つの効果、使うときの注意点を例文を載せてわかりやすく解説します。
倒置法を使いこなせると、心に響く印象的な文章で、読者の興味を惹きつけることができます。
語順を逆にするだけでインパクトのある文章になりますので、ぜひ一緒にマスターしましょう
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倒置法とは?語順を逆にする表現方法
倒置法とは、文章中の語句を通常の順序とは逆にする表現方法のことです。
デジタル大辞泉には倒置法の意味について、つぎのように書かれています。
とうちほう【倒置法】
文などにおいてその成分をなす語や文節を、普通の順序とは逆にする表現法。
語勢を強めたり、語調をととのえたりするために用いられる。「どこに行くのか、君は」「起きろよ、早く」など。
引用:デジタル大辞泉
わかりやすいので例文を見てみましょう。
通常:私は 桜を 楽しむ 倒置法:私は 楽しむ 桜を
通常の文章は「私は桜を楽しむ」と語句を並べます。
倒置法の文章は「私は楽しむ、桜を」と、あえて通常の順序とは逆にして語句を並べます。
つまり、伝えたい言葉を強く印象づけるために語句の並びを逆にします。
通常:主語→目的語→述語 倒置法:主語→述語→目的語
通常の文章は「主語」→「目的語」→「述語」の語順が基本ですよね。
倒置法は「主語」→「述語」→「目的語」と「述語」を前に持ってきます。
「主語」→「述語」の場合は「主語」と「述語」を入れかえると倒置法になります。
「主語」→「述語」の例文を見てみましょう。
通常:私は 楽しむよ 倒置法:楽しむよ 私は
倒置法は「倒して置く技法」と書くように、後ろの語句を前に倒して置く表現方法です。
それにより、語順を逆にする表現方法という意味になります。
ほかの例文を見てみましょう。
・夢のような時を過ごした、きみと ・進め!どこまでも ・思いっきり書こう、いつでも編集できるから
上のように語順を逆にすることで、深い意味を持たせて言葉に余韻や強さをあたえます。
倒置法を使いこなせれば、単調な文章に変化をあたえて、魅力的で奥行きのある文章を作れます。
では、どのようなときに倒置法を用いるとよいのでしょう?
つぎの項目で、倒置法に向いている文章を見てみましょう。
倒置法に向いている文章
倒置法は、感情に訴える表現や印象深い表現にするときに用いると効果的です。
Webライティングであれば、コラムやエッセイ、ブログ記事に有効です。
ほかにも小説や随筆、短歌や俳句といった文学的な文章とも相性がよく、心を捉える表現をするときに適しています。
コラム記事
コラムやエッセイ、ブログ記事で倒置法を使うと、平凡な文章に抑揚をあたえて、読者を楽しませることができます。
とくに、文章の重要な場面で用いると、流れに刺激が加わり、読者の視線を自然と集められます。
上のように「ここぞ!」という大切な場面で用いると、印象に残る文章になります。
例文を挙げますね。
◆ コラム記事:倒置法の例文 ・わたしは声を大にして伝えたい、これを読んでいるあなたに届くように。 ・僕自身の経験から賭けごとには手を出さないほうがいいと断言できる、絶対に、何があっても。 ・ここまで成長できたことを心のそこから感謝します、みなさまのお陰であると。
同じ内容を異なる表現であらわせるので、文章のバリエーションを増やすことができ、読者に新鮮な印象をあたえます。
コラム記事はビジネス文書と異なり、伝えたい内容を自由に表現できるので、倒置法を使うと効果的に文章に強弱をつけられますよ。
小説・随筆
倒置法がもっとも使われる文章は小説です。
心を捉える表現をする文章と相性がよく、随筆にも適しています。
実際に、有名な小説や随筆には倒置法が多く使われており、登場人物の心情を表現して、読み手の心に深く印象づけています。
代表的な例を挙げると、川端康成が書いた小説「雨傘」に倒置法を用いた美しい表現があります。
「雨傘」は、少年と少女の初々しい恋心を描いた物語です。
小説の最後に倒置法が使われており、作品全体に深みと情感をあたえています。
写真屋へ来る道とはちがって、ふたりはきゅうに大人になり、夫婦のような気持ちで帰っていくのだった。
傘についてのただこれだけのことでー。
引用:川端康成「雨傘」
写真屋へ向かう道中では、傘の中で身を寄せることもできなかった少年と少女が、傘にまつわる、とある出来事をきっかけに、来るときよりもずっと強く心を通わせて帰途につきます。
「傘についてのただこれだけのことでー。」
この一文を巧みに倒置することで、傘の出来事をきっかけに、いかに「ふたり」の距離が縮まったかを強調し、詩情豊かに表現しています。
作者の技巧によって美しい言葉であらわし、物語に余韻を残していますよね。
このように、読み手の感情に深く訴える必要がある小説では、倒置法を使うことで、物語の世界観に読者を一気に引き込むことができます。
なお、傘にまつわる出来事は、下のとおりです。
写真屋を出ようとして、少年は雨傘を捜した。ふと見ると、先きに出た少女がその傘を持って、表に立っていた。
少年に見られてはじめて、少女は自分が少年の傘を持って出たことに気がついた。
そして少女は驚いた。なにごころないしぐさのうちに、彼女が彼のものだと感じていることを現わしたではないか。
引用:川端康成「雨傘」
上の内容は、何気ない普通のことのように思えるかもしれません。
しかし、言葉にできないほどの恋心を抱く二人にとっては、些細な出来事も、深い意味を持つ宝物のような瞬間になります。
だからこそ、作品の最後で雨傘の出来事を倒置することで、何ということのない出来事に一喜一憂する、二人の繊細な恋心を表現できると言えます。
倒置法は、こうした細やかな心情を描くときに文学作品でよく使われます。
短歌・俳句
倒置法は、短歌や俳句にも効果的に使えます。
文字数の制限がありますが、倒置法を使うことで、少ない文字でもインパクトをあたえて、情緒を感じさせることができます。
こちらも、有名な短歌である石川啄木の作品を例に倒置法を見てみましょう。
「やはらかに 柳あをめる北上の 岸辺目に見ゆ 泣けと如くに」
(訳:やわらかな若葉が青い色で柳に芽吹く、北上川の岸辺の光景が自然と目に浮かんでくる。私に泣けと語りかけるかのように)
引用:石川啄木「一握の砂」
石川啄木が、故郷を流れる北上川を思い浮かべて、望郷の念を込めた歌です。
「泣けと如くに」が強調されて、生まれ育った景色を重ねる気持ちを端的にあらわしています。
今度は、俳句を例に見てみましょう。
すずめの子 そこのけそこのけ お馬が通る
意味:雀の子よ。早くその場所をどかないと馬に踏みつぶされてしまうよ。
引用:小林一茶
毎年よ 彼岸の入りに 寒いのは
意味:彼岸の入りが冷えるのは毎年のことよ。
引用:正岡子規
いざ行かむ 雪見にころぶ 所まで
意味:さあ、雪見の宴に行きましょう。
引用:松尾芭蕉
雪に足をとられて転んでも楽しいではありませんか、一緒に雪で転ぶところまで行きましょう。
これらの俳句が多くの人の心に残るのは、倒置法が効果的に使われて、文章の強弱やリズムが新鮮に感じられるからです。
このように倒置法は、日本の短歌や俳句といった伝統的な技法で感情を表現するときに多く用いられ、簡潔な言葉の中に深い意味を持たせるのに役立ちます。
その逆に、事実を淡々と伝える文章には、倒置法は向いていません。
そのため、評論文や新聞記事、ビジネス文書のような客観的事実を伝える文章には控えるようにしましょう。
では、倒置法に向いている文章を理解できたら、つぎは、倒置法を使うときのポイントを見てみましょう。
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Webライティングで倒置法を使うポイント
倒置法は、語順を逆にするという少し凝った技法を用いる表現です。
執筆した本人は「よい文章を書けた」と思っても、読み手にとっては違和感のある文章であったり、意味のわかりにくい表現だったりすることがあります。
Webライティングで大切なことは、読者に負担をかけずにスラスラと読める文章にすることです。
倒置法を用いて文章を書いたあとは、必ずつぎの点を確認することが重要です。
読み返すときに、自分が読者であると仮定して、倒置法の文章がどのように受け取られるかを想像することが大切です。
たとえば、文脈に合わない倒置法は、読者に違和感をあたえて理解を妨げます。
また、倒置法を使う場合でも、全体の流れを大きく崩さないように、一貫性を保つことも欠かせません。
読者が文脈や意味を正しく理解できるかを考えながら、適切な場所・適切な用法で倒置法を使うことを心がけましょう。
倒置法5つの効果
倒置法を身につけると表現の幅が広がり、5つの効果を得られます。
強調できる
後ろの語句を強調して強く印象づける
倒置法は、あえて語順を入れかえることで、後ろの語句を強調できます。
例文を見てみましょう。
きみの手料理を食べてみたい ↓ 食べてみたい、きみの手料理を
替えのきかない「きみの手料理を」という特別な意味が強く伝わりますよね。
「きみの手料理を」の言葉を最後に持ってくることで、強い印象をあたえることができ「きみの手料理」の言葉を強調できます。
この倒置法の効果を使うと、商品を紹介する記事をうまく書けます。
この吸いつくような泡を、ぜひ実感してください! ↓ ぜひ実感してください!この吸いつくような泡を
例文のように「この吸いつくような泡」を強調して、商品の良さを強く訴えることができます。
強く印象づける
インパクトが増して読者の興味が湧く
強調したい語句を最後に持ってくると、読者に強く印象づけます。
こちらも例文を見てみましょう。
絶対に忘れない。負けた悔しさを
「忘れない」を読んで「何を?」と思ったら「負けた悔しさを」が目に入ってきて、さらに続きが気になりますよね。
「負けた悔しさを絶対に忘れない」とするよりも、あえて後ろに持ってくることでインパクトが増します。
今度は、意外性のある言葉を持ってきて、さらにあたえる印象を強くしましょう。
・未来の住まいが変わる?!火星が身近に ・実はカルシウムが豊富だ、カップラーメンは
インパクトがさらに増して興味が湧きますよね。
例文のように、意外性のある言葉で強く惹きつけたいときに用いると、倒置法の効果を発揮できます。
情緒的な表現ができる
- 心情や情景を深く想像させる
- 景色や音のイメージを膨らませるときに有効
倒置法は、情緒的な表現で心情や情景を深く想像させる効果があります。
例文を見てみましょう。
・とても綺麗だね、今夜の月は ・ガヤガヤとやじ馬が人だかりをつくっていた。まるで祭りを見物するかのように
読者に景色や音を想像させてイメージを膨らませるときに有効です。
語勢を強める
- 言葉の調子や勢いを強める
- セリフを用いて話し手の感情をあらわすときに有効
倒置法は、言葉の調子や勢いを強める効果があります。
とくに、セリフを使って話し手の感情をあらわすときに役立ちます。
例文を見てみましょう。
・今日どこへ行くの?あなたは ・準備しろよ、早く!
とても短い言葉ですが、話し手の不安や苛立ちが伝わってくるのではないでしょうか。
さらに、説明文と組み合わせると、感情をより強く訴えることができます。
やった!と僕は思わず叫んだ ↓ 僕は思わず叫んだ。やった!と
通常の言い方よりも、喜びの印象が大きく変わりますよね。
感情をあらわす場合は、後ろにセリフや発言を持ってくると、語勢が強まるので心に響きやすくなります。
リズムをあたえる
- メリハリがつき文章に奥行きが出る
- 心情や情景を強くイメージさせたいときに有効
倒置法は、文章にリズムをあたえる効果があります。
通常の流れを逆にするので、文末表現や韻に変化が加わり、リズミカルになります。
実際に、例文で感じてみましょう。
昨日は嵐山に花見にでかけました 友達とずっと約束していた京都旅行です 一面に広がる景色は桜色に包まれて幻想的でした その光景は今でも目から離れません
メリハリのない、心を動かされない文章ですね。
この文章に倒置法を取り入れてリズムをあたえます。
昨日は嵐山に花見にでかけました ずっと約束していた友達との京都旅行へ 一面に広がる景色は桜色に包まれて幻想的でした 今でも目から離れません、その光景は
単調だった文章に奥行きが出て、人物や風景までも頭に浮かんできますよね。
心情や情景を強くイメージさせたいところで使うと、興味を強く惹きつけることができます。
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倒置法3つの注意点
倒置法は、間違った使い方をすると、わかりにくい文章になってしまいます。
便利な表現ですが、使うときは注意しましょう。
気をつける点は3つです。
ビジネス文書には使わない
通常の語順で事実を正確に伝えよう!
倒置法は、強調したり感情に訴えたりする表現に向くため、客観的な事実を述べる文章には不向きです。
そのため、ビジネス文書や論説文には、倒置法を使わないようにしましょう。
正確さを最優先にして、通常の語順で事実を正しく伝えることが大切です。
多用しない
強調したい箇所にのみ使おう!
倒置法を使いすぎると、不自然な印象をあたえます。
強調して印象づける効果も半減するため、読者の理解や共感を得ることがむずかしくなります。
例文を見てみましょう。
京都には道が通っています、碁盤の目のように その道には見られます、風情ある街並みが そう、通りにこそあふれているのです。趣ある京都の景色が
意味が伝わるような伝わらないような違和感のある文章ですね。
この3つの文のうち、強調したい文のみに倒置法を使います。
京都には碁盤の目のように道が通っています その道には風情ある街並みが見られます そう、通りにこそあふれているのです、趣ある京都の景色が
メリハリの効いた味わい深い文章に変わりましたね。
もっとも強調したい箇所にのみ倒置法を用いて、無駄に使用しないようにすると伝わりやすい文章になります。
体言止めと区別する
意図をもって使い分けよう!
倒置法と混同しやすいのが体言止めです。
体言止めは、文末を名詞や代名詞で終わらせる表現方法です。
体言止めが名詞で終わるのに対して、倒置法は「は」「が」「を」などの助詞で終わる違いがあります。
倒置法と体言止めを区別して、それぞれ意図をもって使うことが大切です。
2つを比較した例文を見てみましょう。
◆ 体言止め 通常:母の一番の得意料理を食べました ↓ 体言止め:食べたのは、母の一番の得意料理
◆ 倒置法 通常:母の一番の得意料理を食べました ↓ 倒置法:食べました、母の一番の得意料理を
上の例文のように、倒置法は目的語などを倒置して用いるので、名詞で終わることはありません。
必ず「は」「が」「を」などの助詞で終わります。
もうひとつ例文を見てみましょう。
◆ 体言止め 通常:この宿の自慢は、窓から見える海だよ ↓ 体言止め:この宿の自慢は、窓から見える海
◆ 倒置法 通常:この宿の自慢は、窓から見える海だよ ↓ 倒置法:窓から見える海だよ、この宿の自慢は
こちらも、倒置法は最後が「は」の助詞で終わっています。
一方、体言止めは最後が「海」と名詞で終わっています。
倒置法と体言止めは、よく似ているので混同しがちですが、読者にあたえる印象が異なるので区別して使いましょう。
体言止めの使い方を知りたい場合は、下の記事で解説していますので、ご参考くださいね。
くわしく知りたい
体言止めの意味とは?3つの効果と正しい使い方【例文つき】
主語を入れかえる倒置法
ここまでは、主語→目的語→述語の並びを入れかえて表現する倒置法を見てきました。
ここからは、応用編として主語を入れかえて倒置する方法を紹介します。
今までの使い方に慣れてきたら、応用編に挑戦すると、視線を釘づけにするタイトルやキャッチコピーをつくれるようになりますよ。
さっそく例文を見てみましょう。
通常:俺は海賊王になる! 倒置:俺はなる!海賊王に 主語の倒置:海賊王に俺はなる!
強調したい言葉を先に伝えるので、想像を掻きたてられて受ける印象が強くなります。
ほか例文を見てみましょう。
通常:未来が電気自動車の時代へ変わる 倒置:未来が変わる、電気自動車の時代へ 主語の倒置:電気自動車の時代へ、未来が変わる
文章の奥行きが広がり、イメージが膨らみますよね。
インパクトの強い一文に出会えるよう、いろいろと語順を入れかえて印象を感じてみましょう。
また「倒置法」や「体言止め」のほかにも語尾のバリエーションを増やしたい場合は、下の記事がおすすめです。
親しみやすい文にする文末表現も紹介していますので、あわせてご覧くださいね。
くわしく知りたい
一覧表つき「です・ます調」「だ・である調」の使い方と変化のつけ方
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おさらい:倒置法の効果と使い方
倒置法は、語順を逆にする表現方法です。
通常:きみの文章をはやく見たいな ↓ 倒置法:はやく見たいな、きみの文章を
流れを変えることで、印象の弱い文章に強さやリズムをあたえます。
さらに倒置法を用いることで、5つの効果を得られます。
倒置法はコラムやエッセイ、ブログなど、感情的な表現や印象深い表現を伝える文章に効果的です。
ビジネス文書や評論文、ニュース記事には適さないので注意しましょう。
また、倒置法をマスターしたら、表現を豊かにするテクニックを身につけることもおすすめです。
下の記事では、修辞法の使い方について豊富な用例をのせて解説していますので、あわせてご覧くださいね。
おしまいに
倒置法を使うと文章の雰囲気がガラリと変わります。
とくに、重要な見せ場で使うと、趣のある印象的な文章になります。
余韻を残して情景を強くやきつける文章になりますので、ぜひお試しくださいね。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございます。
それでは、ごきげんよう。
桜御前